ビル衛生管理法(建築物衛生法) 特定建築物の検査・分析 - 株式会社日本分析
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ビル衛生管理法(建築物衛生法)特定建築物の検査・分析

1.対象施設は?

不特定多数の人が利用する建築物の維持管理について、環境衛生上必要な事項(水質検査・貯水槽清掃・空気環境測定・残留塩素測定など)を定めた法律が、ビル衛生管理法(建築物衛生法):正式名称「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」です。

1-1.特定建築物

不特定多数の人が利用する施設として、ビル衛生管理法(建築物衛生法)の対象になる施設には、どんなものがあるでしょうか?
例えば、映画館、劇場・コンサートホールやスポーツ観戦をする施設、さらにはホテルや学校、オフィスビルなどが対象になります(これらを法律では「特定建築物」といいます)。

法律では、
1. 興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館又は遊技場
2. 店舗又は事務所
3. 学校(研修所も含む)
4. 旅館
上記の用途に供される部分の延床面積が3,000m2以上となる建築物及び3.の学校の場合は8,000m2以上のものとなっています。

しかし、工場や病院・介護施設、大規模なマンションなどは対象外ですので、ご注意ください。これらは、各施設によって環境条件が異なる(特殊な環境にあるものが多い)ため、また、マンションは個人が管理する部分が大きいということで特定建築物から除外されています。ただし、マンションに商業施設が付随している場合などは、それらの専有面積が3,000m2以上ある場合は、法律の対象になります。

学校旅館

1-2.特定建築物かどうかの判断

特定建築物に該当するかどうかの判断は、なかなか難しいと思います。
当社にもさまざまなご質問をいただきますので、いくつか事例とともにお話しします。
※最終確認は、お近くの保健所へお問い合わせください。

延べ床面積の計算はどうやって行うの?

ひとつの建築物を下記の4つに分類して計算します。
1…専ら特定用途(例:事務所、店舗の専有部分)に該当する部分
2…1に付随する部分(いわゆる共用部分といいます)例えば、廊下・階段・洗面所
3…1に付属する部分(例:百貨店内の倉庫、事務所に付属する駐車場など)
これら1~3までの床面積の合計が3,000m2以上であれば特定建築物と判断されます。
なお、学校の場合は8,000m2以上となります。

倉庫や駐車場は延べ床面積に含めるの?

多数の人が使用、利用するという要件には該当しないということで、倉庫や駐車場は一般的には特定用途には該当しませんが、先のQ&Aの3に該当する場合は、主たる用途に含まれ、独立の用途としては取り扱われませんので注意が必要です。
建築物の地階等に設置される公共駐車場についても、その建築物の他の部分とは管理主体や管理系統が異なるため、他の部分と一体化して建築物衛生法を適用することは適当でないとの判断から、特定用途に付属する部分には該当しないことが一般的です。

体育館やフィットネスクラブ、あるいは研究所などは特定建築物なの?

一般的に、スポーツをするための施設は特定建築物には該当しません。ただし、スポーツを公衆に見せる施設で興行場に該当する場合は、特定建築物になります。 フィットネスクラブについても、遊技場のように娯楽性が極めて強い場合を除いて特定建築物には該当しません。

図書館事務所駐車場

2.特定建築物の水質管理

特定建築物に該当すると、環境衛生上必要な管理(水質検査・貯水槽清掃・空気環境測定・残留塩素測定など)を実施する必要が生じます。

2-1.水質検査

用途 水の種類 頻度(回数) 検査項目
飲料水
●一般的には右記11項目と16項目を年に各1回、6月~9月の間に消毒副生成物12項目を1回
※原則として給水系統別に末端給水栓で
※高置水槽方式の場合は高置水槽の系統別に末端給水栓で
※中央式の給湯設備は、飲料水と同じ水質検査を給湯水についても実施
水道水および井戸水
※ここでいう水道水とは貯水槽に一旦貯めた水をいい、直結水は除く
7日以内ごとに1回(日常管理) 1項目(遊離残留塩素)
6か月以内ごとに1回(年2回) 16項目
※1回目適合であれば次回のみ11項目に省略可
6月~9月の間に1回 消毒副生成物12項目
井戸水は上記に追加で 3年以内ごとに1回 7項目
雑用水
※生活用の目的以外で水を供給する場合
雨水、下水処理水等を使用した散水、修景または清掃用
(注:し尿を含む水を原水として使用しないこと。)
7日以内ごとに1回 4項目
2か月以内ごとに1回 2項目
雨水、下水処理水等を使用した水洗便所用 7日以内ごとに1回 4項目
2か月以内ごとに1回 1項目(大腸菌)
給湯水等についても、レジオネラ属菌等による水の汚染に伴う健康影響を防止する観点から、その水が人の飲用、炊事用、浴用その他人の生活の用に供する目的で供給される場合には、水道水質基準に適合する水を供給することとされており、給湯設備についても貯湯槽の点検、清掃等適切な維持管理を実施することが必要です。給湯設備には、局所・瞬間湯沸し式、局所・貯湯式、中央式など様々な構造のものが存在しますが、中央式の給湯設備を設けている場合は、給湯水の汚染が特に懸念されるため、当該給湯水について、給水栓における水質検査を実施することが必要です。ただし、当該給湯設備の維持管理が適切に行われており、かつ、末端の給水栓における当該水の水温が55度以上に保持されている場合は、水質検査のうち、遊離残留塩素の含有率についての水質検査を省略しても良いとしております。
雑用水とは、建築物内で発生した排水の再生水の他、雨水、下水処理水、工業用水等を、便所の洗浄水、水景用水、栽培用水、清掃用水等として用いる水のことです。水洗便所用水への供給水が、手洗いやウォシュレット等に併用される場合は、飲料水としての適用を受けることとなります。
採水は給水管末端の位置にある検水栓で行います。末端給水栓が無い場合は設置をしてください。
給水栓における水に含まれる遊離残留塩素の含有率は0.1(結合残留塩素の場合は、0.4)mg/L以上に保持するようにすること。なお、供給する水が病原生物に著しく汚染されるおそれがある場合、病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を多量に含むおそれがある場合は、給水栓における水に含まれる遊離残留塩素の含有率を0.2(結合残留塩素の場合は、1.5)mg/L以上とすること。

検査項目の詳細(項目の内訳など)は ダウンロードページへ

ダウンロードページに資料あります

2-2.その他の管理

管理すべきこと 頻度 内容ほか基準値等
貯水槽清掃(含む貯湯槽) 1年以内ごとに1回 水槽内部だけでなく、外部も清掃しましょう。
また、ポンプや周辺機器も点検し、定期的な管理に努めましょう。
空気環境測定 2か月以内ごとに1回 6項目
新築、増築、大規模の修繕又は大規模の模様替えを完了し、その使用を開始した時点から直近の6月1日から9月30日までの間に1回 1項目(ホルムアルデヒドの量)
冷却塔・冷却水 使用開始時及び使用期間中1ヶ月以内ごとに1回
(1ヶ月を超える期間使用しない場合を除く)
汚れの状況の点検
※必要に応じて清掃及び換水等を行う。
1年以内ごとに1回 冷却塔、冷却水の水管の清掃
排水槽の清掃 6か月以内ごとに1回 排水槽内の汚水及び残留物質を排除し、流入管、排水ポンプ等に付着した物質を除去しましょう。
排水管、通気管及び阻集器については、内部の異物を除去し、必要に応じ、消毒等を行いましょう。
なお、清掃によって生じた汚泥等の廃棄物は、関係法令の規定に基づき、適切に処理することを忘れずに。
定期清掃 6か月以内ごとに1回 いわゆる大掃除を、定期的に、統一的に行います。
ねずみ等の防除 6か月以内ごとに1回 ねずみや害虫等の発生場所、生息場所及び侵入経路並びに被害の状況について統一的に調査を実施します。
【参考】防錆剤の濃度管理
(例としてリン酸塩を主成分とするもの)
注入初期とは、給水栓における水中の防錆剤濃度が安定し、かつ赤水が防止できるまでの期間をいいます。
防錆剤の使用を開始した日から1月以内に、使用開始年月日、当該特定建築物の名称及び所在場所、使用する防錆剤の種類、防錆剤管理責任者の氏名及び住所を当該特定建築物の所在場所を管轄する保健所長を経由して都道府県知事又は政令市長に届け出なければなりません。また、使用する防錆剤の種類又は防錆剤管理責任者に関する届出事項を変更したときは、その日から1月以内にその旨同様に届け出ることが必要です。

参考:貯水槽の水張り終了後に行う水質検査等に関する留意事項について(平成15年4月15日健衛発第0415001号)防錆剤の使用方法等について

3.水の適正な管理のために(チェックポイント)

特定建築物は水の適正な管理のために、ビル衛生管理法(建築物衛生法)で以下のことが必要になります。

3-1.給水設備の自主点検記録

ビル衛生管理法施行規則第4条で、人の飲用、炊事用、浴用その他、人の生活の用に供する水については、貯水槽内外の状況や給水栓における水の外観などに関して定期的に点検が義務付けられています。平成14年12月3日厚生労働省令第156号改正により、これまで飲料水を供給する場合に限って水道法の水質基準に適合することとしていたものに、飲料水として供給する水の定義範囲を明確化し、飲用以外の生活用の目的で水を供給する場合も、水道法の水質基準に適合させなければならなくなりました。
また、同改正でビル管法施行規則第4条の2が新設され、生活用の目的以外で水(いわゆる雑用水)を供給する場合は、人の健康に係る被害が生ずることを防止する措置を講ずるための基準が追加されました。

3-2.給水設備の自主点検記録の報告

給水設備自主点検記録票には、自治体で出している記入例を参考に点検結果を記入し、毎年1回、過去1年分の記録の写しを担当係等に提出します。
なお、ビル衛生管理法第5条4項で規定している「専ら事務所の用途に供される特定建築物」に該当するビルは、この報告は必要ありませんが、代わりに簡易専用水道としての登録検査機関の定期法定検査(立入検査)を受けることが必要です。

3-3.報告内容

書類一式 (一般的に)

・給水設備自主点検記録簿の写し
・水質検査結果書の写し(防錆剤を使用している場合にはその検査結果も含む)
・残留塩素等の検査実施記録票(1ヶ月分の写し)

水質検査

3-4.法定検査

ビル衛生管理法(建築物衛生法)で規定する特定建築物については、法に基づき適正な管理が行われている場合、水道法に定める簡易専用水道の管理基準以上の管理を実施していることと認められ、簡易専用水道の検査は、管理の状況についての書類の提出による検査となっています。

例えば、東京都では建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行細則(東京都規則)で、飲料水貯水槽等維持管理状況報告書を保健所に提出すること(施行細則第5条)といったようになっています。

ビル衛生管理法(建築物衛生法)の「対象施設」と「非対象施設」で1つの簡易専用水道を共用している場合は、受水槽、その他ビル衛生管理法適用部分に関係するものはビル衛生管理法に基づく管理を実施しなければなりませんが、ビル衛生管理法非該当部に関係するものは、簡易専用水道の管理を実施することになります。したがって、ビル衛生管理法非該当部分については、簡易専用水道の管理の検査を受験しなければなりません。

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