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放射能・放射線の基礎知識

放射能と放射線の基礎知識

POINT1:放射能と放射線の違い

放射線と放射能の関係は、電球と光の関係によく似ています。
電球の光に相当するのが「放射線」とすれば、電球自身が放射線を出す「放射性物質」、電球が発光する能力が「放射能」となります。
すなわち放射能とは、放射線をだす能力(性質)をさしています。

POINT2:放射性同位体元素とは

原子は中心に原子核があり、その周りに電子が運動しています。原子核は、正の電荷をもつ陽子と、電荷をもたない中性子がいくつか集まってできています。 原子核内の陽子と中性子の数の和を質量数と言います。陽子の数で原子番号が決められています。

この原子番号がおなじで、質量数の異なる原子同士を互いに同位体と言います。同位体は、陽子の数がおなじで、中性子の数だけがちがう原子です。 同位体どうしは、電子と陽子の数が同じなので、化学的性質は非常によく似ています。同位体どうしを区別するのに、元素記号の左上に質量数を、左下に原子番号を添えて書きます。

例として、水素は質量数が1です。陽子が1と電子が1でできています。これに中性子が1個ついたものを重水素、ジュウテリウムと言います。 中性子が2個ある質量数3の三重水素をトリチウムと言います。原子力発電所の原子炉内では、質量数3の水素がかなり作られていますが、β線を出しながら崩壊しヘリウムに変わります。 自然界にはごくわずかしか存在しません。このように分類した原子を核種といいます。また、この自発的に放射線をだして、別の核種に変わるこのような現象を放射性壊変といい、1秒当たりに壊変する原子の数が放射能の強さです。

POINT3:放射線の種類

放射線にはいろいろな種類があります。
主な放射線としては、α線、β線、γ線、中性子線などがあります。放射線には物質を通り抜ける性質があり、その透過力の強弱は放射線の種類によって異なります。
α線は、質量の大きな原子核がα粒子(陽子2個と中性子2個からなるヘリウムの原子核。電荷は2+)を放出し、質量数が4少ない核種に変わるときに放出されます。 質量が電子に比べて大きいのですが、物質中で急速にエネルギーを失い停止するので、空気中で数センチしか飛びません。通過力は弱く、紙一枚通過しません。


β線は、原子核から放出される電子の流れです。原子核のなかで、高速の電子の流れが陽子と中性子を互いに変換させる現象を総称してβ壊変と言います。 β-壊変、β+壊変、軌道電子捕獲の3種類があります。(一般的に電荷は1-です。電荷が1+のものもありますが、すぐに消失します。質量はないとみなします。) 電子の質量は、α粒子に比べてかなり小さいので飛ぶ距離が長いです。エネルギーの小さいものは、空気中1cm以下で停止しますが、なかには数mとぶものもあります。 透過力は大きくなく、薄いアルミ板も通過しません。通常は、空気などにほとんど吸収されてしまいます。

γ線・X線は、エネルギーの電磁波(光子)で、物質を深く透過します。電荷も質量もありません。 電波や、可視光に比較してエネルギーが高く、波としての性質はあらわさず、粒子のような性質です。運動量はあっても質量のないエネルギーの粒のようなものです。 γ線のほうがX線よりエネルギーが高く、比較的低エネルギーのものをX線と呼びます。γ線は原子核が、X線は原子核の周囲にある電子が、エネルギーの高い状態から低い状態になるときに放出されます。 γ線は、強力な殺菌などで利用されています。γ線やX線は、紙や薄いアルミ板は通過してしまいます。鉛の板で遮蔽できます。

電離作用は、α線、β線ほど強くはありませんが、透過力が大きいため測定の対象になっています。


中性子線は、原子炉内のウラン235の核分裂などで飛び出すのが中性子です。もっとも透過力が高いので、厚い水やコンクリートでないと遮蔽できません。 宇宙からの放射線など自然界でも存在しています。原子力発電所の事故由来の中性子線は、除染作業などでもほとんど存在しないので測定の対象ではありません。

電離作用とは、放射線が物質を透過するとき、放射線の持つエネルギーが物質に与えられ、電子がはじきだされます。 この作用を電離作用と言います(電子が飛び出すので、β線と同じです)。 電離により生じた放射線が生物に影響を及ぼしたり、写真乾板を感光させます。医療機関のエックス線撮影も、この作用を利用したものです。

放射線はこの作用により、細胞内の水分子をイオン化して活性酸素を発生させます。また、生物の遺伝情報が記されているDNAを直接傷つけたりします。

POINT4:放射能の半減期

放射能は、時間がたつとともに衰えていき、放射性物質から出てくる放射線も減少します。 放射能が2分の1になるまでの時間を半減期と言います。セシウム134は約2.1年、セシウム137は約30年かかります。
半減期を過ぎた放射性セシウム134が、さらに2.1年たつと4分の1になり、更に2.1年たつと8分の1になります。4.2年で0になるわけではありません。

POINT5:放射線と放射能の単位

ベクレル(Bq):放射能のつよさ
放射性物質のもつ放射線を出す能力を表します。1秒間に壊れる原子の数で表します。

シーベルト(Sv):人がうけた放射線の量
放射線が人体に与える影響の度合いを表す単位です。通常は、1000分の1の、ミリシーベルト、100万分の1の、マイクロシーベルトを使います。

cpm(カウント パー ミニッツ):計測される放射線の強さ
計測器で1分間に計測された放射線の数を表します。v

放射能や放射線と私たちの生活

POINT1:日常生活と放射線

放射性物質は、宇宙、地面、空気中、食べ物など、自然界に存在しています。 宇宙からは、地球に水素の原子核(陽子)が降り注いでいます。「宇宙線」と呼ばれ、大気圏の物質と衝突して放射性物質を作っています。
地面には放射性のウラン、空気中には、地面からもれた放射性ラドンなど、また食べ物に含まれる放射性カリウム40などがあり、食事や呼吸などで自然に体内に取り込んでいます。
自然の放射能により、生物の細胞やDNAは傷ついていますが、人や生物の細胞にはDNAの傷をある程度修復する仕組みがあるので、異常な細胞の増殖を抑えたりして健康を保つ事ができるのです。
この様な自然放射線の世界平均は、1人あたり年間2.4mSv(ミリシーベルト)です。
大地から0.48mSv
食物から0.29mSv
宇宙から0.39mSv
空気中のラドンから1.26mSv
合計2.4mSvです。

ブラジルのガラバリ地区や、イランのラムサールは自然放射線量が高く、年間平均10mSvで、このように高い地域もあります。 これら地域の住民に健康に影響が出ているという報告はありません。

日本の場合、自然放射線による被ばく量は、1年間で1.5mSvとされています。

このほかの実効線量(mSv)の大きさに対する人体への影響は、次のとおりです。

実効線量(mSv) 人体への影響
0.05-0.3 胸のX線写真撮影1回分
0.6 胃のX線写真撮影1回分
1 一般公衆が1年間にさらされてよい人工放射線の限度(ICRP勧告)(医療は除く)
2.4 1年間に自然環境からひとが受ける放射線の世界平均
6.9 胸部X線コンピュータ断層撮影検査(CTスキャン)1回分
100 人間の健康に確率的影響(※)が出ると証明されている放射線の最低値
250 白血球の減少
500 末梢血中のリンパ球の減少
1000 急性放射線障害。悪心(吐き気)、嘔吐(10%の人)、水晶体混濁
3000-5000 50%の人が死亡
7000-10000 99%の人が死亡

(ICRP:国際放射線防護委員会)
※放射線による影響を分類すると、「確定的影響」と「確率的影響」とに分けられます。

「確定的影響」には、「身体的影響」の血中リンパ球の減少や、皮膚の急性潰瘍、白内障、脱毛などがあります。
これは、多量の放射線を浴びない限り発生しません。影響が発生しないとされる下限値を「しきい値」と言います。 被ばくした人の1%に影響が現れる線量のことです。被ばくした放射線量の増加にともない、障害の程度が大きくなります。

「確率的影響」には、「身体的影響」であるがん(悪性新生成物)などがあります。
「確率的影響」は「確定的影響」とは異なり、線量の増加に伴って障害の発生する頻度が大きくなり、しきい値はないと考えられています。

さいごに

放射線の種類は、天然か、人工的につくられたものかによって区別しているだけで、放射線そのものは、自然放射線も人工放射線も同じものです。 においもなく目にも見えないので人間の五感で感じることができません。ある程度は放射線で傷ついたDNAを修復する作用がありますが、 放射能によりついた傷が大量に積み重なると、急性では細胞が死んでしまったり、長期的にはがんの原因になったりするおそれが出てきます。
現在は、放射性物質の降下はおさまっています。あまり怖がりすぎるのは風評被害につながるおそれがあります。 しかし、余計な被ばくは抑える必要があることに変わりはありません。放射能汚染の程度を正しく理解し、体内被曝のリスクを抑えていくことは、今後もとても重要です。

2012.2.14 分析課 課長 貝塚 幸子

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